2023年の本屋大賞 第2位を受賞した『ラブカは静かに弓を持つ』。
タイトルだけ目にしたときは、昔の戦争ものかな、と思っていましたが、あらすじを目にして思い違いに驚きました。
全著連(全日本音楽著作権連盟)に所属する主人公:橘が、音楽教室への潜入調査を命じられます。
潜入先の音楽教室でチェロと仲間に出会い過去の事件の傷を癒やしていきますが、潜入調査であることに葛藤します。
そんな、主人公や登場人物の心情を、Audibleでは多数のナレーターが見事に演じられています。
今回は、深海のような静けさの中に温かな余韻が残る本作の魅力をレビューを通じて紹介します。
(ネタバレは無いよう配慮していますが、話の中身に触れる点はありますのでご了承ください。)
安壇 美緒『ラブカは静かに弓を持つ』 作品概要
発売情報・受賞歴
著者:安壇 美緒 (1986年生まれ)
発売日:2022年5月2日
出版社:集英社
受賞歴:本屋大賞 第2位(2023年)、第25回 大藪春彦賞(2022年)、第6回 未来屋小説大賞 第1位(2022年)
あらすじ
武器はチェロ。
潜入先は音楽教室。
傷を抱えた美しき潜入調査員の孤独な闘いが今、始まる。
『金木犀とメテオラ』で注目の新鋭が、想像を超えた感動へ読者を誘う、心震える“スパイ×音楽”小説!
少年時代、チェロ教室の帰りにある事件に遭遇し、以来、深海の悪夢に苛まれながら生きてきた橘。
ある日、上司の塩坪から呼び出され、音楽教室への潜入調査を命じられる。
目的は著作権法の演奏権を侵害している証拠をつかむこと。
橘は身分を偽り、チェロ講師・浅葉のもとに通い始める。
師と仲間との出会いが、奏でる歓びが、橘の凍っていた心を溶かしだすが、法廷に立つ時間が迫り……
※Audible ラブカは静かに弓を持つ あらすじより引用

Audible版『ラブカは静かに弓を持つ』の概要
配信日:2024年3月29日
ナレーター:斉藤 壮馬、伊東 健人、佐々木 啓夫、稲垣 好、松嶌 杏実、一木 千洋、木暮 晃石、三波 春香、鈴木 卓朗
再生時間:10時間41分
評価:☆4.7 767件の評価
▶ Audible公式ページで作品詳細を確認
『ラブカは静かに弓を持つ』 個人レビュー(星評価付き)

物語展開・構成の評価
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
スパイ×音楽という一見異質な組み合わせながら、ストーリーは緻密で美しく、まるで一曲の交響曲のように展開します。
潜入調査員・橘樹が「任務」と「音楽」の間で揺れながら、自分自身を取り戻していく姿を見事に描かれています。
特にチェロ講師・浅葉のチェロ教室で初めて弓を取るシーンの緊張感と、音が「言葉以上の真実」を語る瞬間は圧巻でした。
後半へ向かうテンポの高まりと、静謐な余韻を残すラストまで、無駄のない見事な構成でした。
橘樹が任務の期限が近づいてくるにつれて訪れる葛藤に、惹き込まれること間違いなしです。
感情の揺さぶりと読後の印象
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
終始静かなトーンで進む物語ですが、感情の波は想像以上に大きく驚きました。
橘樹の抱える過去の痛みと、音楽を通して少しずつ癒されていく過程、そして潜入任務の葛藤がとても丁寧に描かれています。
浅葉の言葉や生徒たちの演奏が、橘の凍った心を少しずつ溶かしていく過程が丁寧に描かれ、聴き終えたあともチェロの深い音色と“赦し”の余韻が心に残ります。
登場人物の魅力
⭐️⭐️⭐️⭐️☆
橘樹の寡黙な誠実さ、浅葉の包み込むような優しさ、そして音楽教室の仲間たちの温かさ。
それぞれのキャラクターが“音”を通して、橘樹の成長に関わっていく姿が美しく描かれています。
人と人をつなぐ「音楽の力」を軸にした人物描写は非常に印象的です。
全著連側の人物造形についてはやや控えめで、もう少し緊張感のある対比があってもよかったかもと感じましたが、メインを音楽教室側に置いていると解釈すると良い配分なのかなと思いました。
ナレーターの演技・声の印象
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
橘樹を演じる斉藤壮馬さんの優しいナレーションが主人公像にピッタリでした。
直近で「るろうに剣心」のアニメを観ていたので、緋村剣心のイメージに少し引っ張られてしまいましたが😂
また、伊東健人さんが演じる浅葉の包容力ある声色との対比も絶妙で、まるでラジオドラマを聴いているかのような臨場感があります。
静かな場面の息遣いや、音楽を語るシーンの“間”が特に素晴らしく、Audibleでぜひ味わっていただきたい一作です。

総評 ▷ Audibleの聴き読書をオススメします!
「ラブカは静かに弓を持つ」は、“音”そのものが物語の一部となっている作品です。
ところどころ挟まれるチェロの演奏も含めて、Audibleで聴くことで感じられる深みがあります。
斉藤壮馬さん・伊東健人さんらによる朗読は、まさに心に響く“演奏”。
静けさの中に潜む緊張、音楽が心を解きほぐしていく瞬間が、その言葉の一つひとつが音楽のように心に染みていきました。
読書としてももちろん素晴らしいですが、耳で聴くことで、橘樹の揺れる心やチェロの響きが一層リアルに感じられます。
ぜひ、Audibleで「音が語る物語」を体感してみてください。
本レビューがみなさんの参考になって、誰かがこの物語に出会うきっかけになれば嬉しいです。
感想もコメントでぜひ教えてください!

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家事や自動車通勤など、手は空いていないけど耳は空いている時間がある方は、その時間を有効活用できるようになりますよ!


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