【著者の東欧実体験】米原 万里『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』レビュー

小説

米原 万里『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』 は、1960年プラハから始まり、2000年代まで続く、著者の実体験を基にした物語です。
社会主義国で過ごす中で、民族・宗教・戦争などで翻弄される人々が描かれています。

世界史にはあまり詳しくはなかった私ですが、登場人物と基に世界情勢が描かれているため、すごく入ってきやすいと感じました。

今回は、著者:米原 万里さんと親友3人の30年越しの再開を交えたエッセイとなっている本作を、レビューを通じて紹介します。
(ネタバレは無いよう配慮していますが、話の中身に触れる点はありますのでご了承ください。)

発売情報・受賞歴

著者:米原 万里 (1950年4月29日生まれ)
発売日:2001年6月30日
出版社:角川文庫
受賞歴:第33回大宅壮一ノンフィクション賞(2002年)

あらすじ

960年プラハ。
マリ(著者)はソビエト学校で個性的な友達と先生に囲まれ刺激的な毎日を過ごしていた。
30年後、東欧の激動で音信の途絶えた3人の親友を捜し当てたマリは、少女時代には知り得なかった真実に出会う!

※Audible 嘘つきアーニャの真っ赤な真実 あらすじより引用

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配信日:2016年9月9日
ナレーター:大塚 さと
再生時間:8時間43分
評価:☆4.9 180件の評価
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物語展開・構成の評価

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
子どもの頃の友情を軸にしながら、東欧の激動の歴史と登場人物それぞれの人生が交差していく構成が見事でした。
かつての同級生・リッツァ/アーニャ/ヤスミンカを探す旅を通じて、記憶と現実、そして「嘘」と「真実」が交錯していきます。
ドキュメンタリー的な骨太さと、物語としてのドラマ性が絶妙なバランスで融合しており、まるで時を超えて現地を旅しているような臨場感がありました。

また、本編後にある「解説」もよかったです。
ただのあとがきではなく、本編の補足をしてくれるような内容になっているので、解説を聴いたあとは「もう一度最初から聴いてみよう」と思わせてくれること間違いなしです。

感情の揺さぶりと読後の印象

⭐️⭐️⭐️⭐️☆
静かな語りの中に、深い衝撃と余韻がありました。
少女時代の懐かしい記憶から始まり、次第に明らかになる戦争と分断の現実。
同級生たちと出会って喜ぶのもつかの間、そこからそれぞれの悩みなどが描かれる展開には感情が揺さぶられます。

「自分だったらどうしていただろう」と問いかけてくるような読後感です。

登場人物の魅力

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
何よりも登場人物が生きています。
主人公であり語り手の米原万里さん自身の率直な語り口、そしてアーニャを筆頭としたのリッツァ/アーニャ/ヤスミンカ(それぞれギリシャ、ルーマニア、ユーゴスラビア出身)の複雑な魅力。
3人自身はもちろんのこと、周囲の人々の描写もリアルで、それぞれが時代の波の中で懸命に生きている姿が鮮明に伝わります。
実在する人物たちだからこその厚みがあり、「記録であり、友情の物語でもある」という稀有な人間ドラマとして心に残りました。
ナレーションを聴きながら、彼女たちが実際に息づいていたんだなと感じさせられました。

ナレーターの演技・声の印象

⭐️⭐️⭐️⭐️☆
ナレーター:大塚 さとさんの落ち着いた声が、作品の重みと知性をしっかり支えていました。
淡々とした語り口の中にも、感情の揺れが丁寧に表現されており、聴きやすく心地よいナレーションになっています。

特に、個人的にはアーニャとヤスミンカの話になるときのトーンの変化が印象的で、彼女たちの心情が自然に伝わってきました。
作品の知的な雰囲気を壊さない誠実な朗読でした。

『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』は、“記憶”と“時代”をたどる一冊になっています。
ナレーター:大塚さとさんの落ち着いた語りが、米原万里さんの知的で温かみのある筆致にぴったりで、まるで著者本人が語っているようなリアリティがあります。

過去と現在、友情と真実が交錯するこの物語は、耳で聴くことでより深く、静かに心に染み入ります。
特にアーニャの「嘘」に隠された真実が明かされていくくだりは、声の抑揚と間の取り方によって一層の切なさが際立ちました。

読書としてももちろん素晴らしいですが、ぜひAudibleで“聴く体験”として味わってみてください。
本レビューがみなさんの参考になって、誰かがこの物語に出会うきっかけになれば嬉しいです。
感想もコメントでぜひ教えてください!

米原万里さんは、1950年(昭和25年)に東京で生まれ、2006年に55歳で亡くなった作家・通訳者です。
小学生のころ、父親の仕事の関係でチェコスロバキア(現・チェコ)・プラハのソビエト学校に通いました。
そこで出会った外国の友人たちとの日々が、のちの代表作『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』の原点となっています。
当時から多様な言語と文化の中で育った経験が、本作を含め名著を次々と生み出したのでしょう。

私はまだ本作『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』しか触れたことがありませんので、他の作品にも触れていこうと思っています。

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