【人馬それぞれの継承の物語】早見 和真『ザ・ロイヤルファミリー』レビュー

小説

早見和真さんの『ザ・ロイヤルファミリー』は、競馬を舞台にした“人と馬、家族と血筋”の壮大な継承ドラマです。
レース、継承、そして再生、そのすべてに熱がこもった一冊でした。

Audibleで聴くと、登場人物たちの想いや馬たちの息づかいがリアルに響いてきます。
特にレースについては競馬場に実際にいるような、臨場感を味わうことができました。

今回は、競馬を好きな人はもちろん今まで競馬に触れる機会がなかった方も楽しむことができる本作について、レビューを通じて紹介します。
(ネタバレは無いよう配慮していますが、話の中身に触れる点はありますのでご了承ください。)

発売情報・受賞歴

著者:早見 和真(1983年9月25日生まれ)
発売日:2019年10月30日
出版社:新潮社
受賞歴:2019年度 JRA賞馬事文化賞、第33回山本周五郎賞

あらすじ

継承される血と野望。届かなかった夢のため――子は、親をこえられるのか?

成り上がった男が最後に求めたのは、馬主としての栄光。だが絶対王者が、望みを打ち砕く。誰もが言った。もう無理だ、と。
しかし、夢は血とともに子へ継承される。
馬主として、あの親の子として。誇りを力に変えるため。
諦めることは、もう忘れた――。
圧倒的なリアリティと驚異のリーダビリティ。
誰もが待ち望んだエンタメ巨編、誕生。

※Audible ザ・ロイヤルファミリー あらすじより引用

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配信日:2022年8月12日
ナレーター:中村 友紀
再生時間:16時間39分
評価:☆4.7 343件の評価
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物語展開・構成の評価

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
主人公は「栗須栄治(クリス)」。職業は、馬主(うまぬし)でも競馬関係者でもない税理士です。
ひょんなことから山王耕造の秘書になるところから物語が始まります。
本作は第一部、第二部と別れて構成されていますが、第一部では、そのクリスが馬主をしている山王耕造の秘書業務を通して、競馬の世界に関わっていくところから始まります。
その中で山王耕造の所有する「ロイヤル」の冠名(かんむりめい)を持つ馬たちを含めた登場人物それぞれの人生について、熱い展開が待っています。
レースシーンの臨場感も見事ですし、かつ大事なレース結果は「戦績表」で見せるという演出は本当に秀逸だと感じました。

そして第二部では・・・、と書きたいところですが、ネタバレ要素が強いので今回は控えておくことにします😅

なお、競馬についての知識は、物語の進行とともにクリスが随時教えてくれますので、ご心配なく。
今まで競馬には興味なかったけど、という方もぜひ触れて欲しい作品です🎠

感情の揺さぶりと読後の印象

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
「ロイヤル」の冠名をもつ競走馬を勝たせたい、という想いが中心になっており、そのために登場人物たちが熱い想いを持って取り組みます。
もちろんうまくいこともあればいかないこともあり、その演出に胸が熱くなったり苦しくなったり、感情がものすごく揺さぶられます。

また、馬主をするということについての、「重圧」と「矜持」も見事に演出されています。
競走馬を養う費用や、競走馬が迎える最期、その辺りも触れられており、そのリアルに胸が苦しくなることもあります・・・

登場人物の魅力

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
先述の通り、税理士から秘書に転身したクリスが、社長であり馬主である山王耕造のハチャメチャに振り回される展開は、パワハラ感もありますが、どこか微笑ましい、そんな展開になっています。
旧時代の社長というイメージがぴったりな山王耕造ですので、周りからは嘲笑されることもありますが、当の本人は確固たる信念を持って経営と馬主をしている点に
「絶対におれを裏切るな」という冒頭のセリフが最後まで残ってくる展開もアツいです。

その他周りの固める、山王の家族・調教師の広中博・馬主として立ちはだかる椎名善弘、そして競走馬たち、それぞれが「勝負」に対して熱い想いをもっており、いずれも欠けては本作が成立しない存在感を放っています。

ナレーターの演技・声の印象

⭐️⭐️⭐️⭐️☆
ナレーター:中村 友紀さんのナレーションは各登場人物の完璧に表現しています。
人間関係について語られる静かな場面では人物の内面を丁寧に表現していました。

レースシーンではスピード感と緊張感をしっかり伝え、本当に競馬場で応援しているような感覚を味あわせてくれました。
第一部、第二部ともに涙を誘う演出の一助になっていますので、ぜひ聴いてほしいです。

『ザ・ロイヤルファミリー』は、読んでも熱いけれど、Audibleで聴くとさらに臨場感が倍増する物語です。
登場人物たちの感情の動き、レース中の馬の息づかいまで、まるでレース場にいるような感覚を味わうことができます。

競馬という舞台を通して、人の想いの継承、馬の血統の継承を描いた人間ドラマが、耳からじんわり心に沁みてきます。

最後に、競馬関係に携わっているわけではないですが、本作で競馬への想いが数段膨れ上がった私から一言。
みなさんにもぜひ競馬に興味をもって競馬場へ足を伸ばしてみてください。
ギャンブルというイメージは強いですが、騎手たちの関係や馬たちの血統なども意識した楽しみ方もできます。

本レビューが少しでも参考になり、「聴いてみようかな」と思っていただけたら嬉しいです。
感想もコメントなどでぜひ教えてくださいね!

妻夫木 聡さん、佐藤 浩市さんらによる映像化

2025年10月現在、TBSにてドラマが放送開始となりました。
私は小説をAudibleで聴き始めた時期とほぼ一緒でしたので、ドラマも平行して観ています。
妻夫木さんら有名俳優さんが見事に「ザ・ロイヤルファミリー」の世界を見事に再現されています。

ドラマは原作の第一部までとなるのか、第二部まで進めるのか、その辺りも楽しみにしながら、ドラマの方もぜひ観てみてください。

ドラマ:ザ・ロイヤルファミリー公式HPはこちら

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基本的に無料体験期間があるので、まずはお試しだけでもオススメします。
家事や自動車通勤など、手は空いていないけど耳は空いている時間がある方は、その時間を有効活用できるようになりますよ!

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