【語り手の正体はまさかの】朝井 リョウ『生殖記』Audibleレビュー

Audibleレビュー

朝井リョウさん『生殖記』は、読み始めた瞬間から「いつもの小説」とはまったく違う空気をまとった作品でした。
主人公の尚成は、どこか社会にフィットしきれない感覚を抱えながら生きています。
そんな彼の日常を追っていくうちに、物語は“人間はなぜ生きるのか”という根源的なテーマへとゆっくり踏み込んでいきます。

特に印象的なのは、語りの視点。
人間の外側から世界をのぞき込むような、独特の語り口が続き、朝井リョウさんらしい新しい挑戦だと感じました😤
Audibleではその語りを福圓美里さんの軽やかなナレーションにより、作品の静かな緊張感をしっかり支えています。

語りの視点などからギャグ要素の大きい作品かと思っていましたが、それだけではなく、深く考えさせられる一作でした。

今回は『生殖記』について、レビューを通じて紹介します。
(ネタバレは無いよう配慮していますが、話の中身に触れる点はありますのでご了承ください。)

発売情報・受賞歴

著者:朝井 リョウ(1989年5月31日)
発売日:2024年10月2日
出版社:小学館
受賞歴:キノベス! 2025 第1位、第22回本屋大賞8位

あらすじ

とある家電メーカー総務部勤務の尚成は、同僚と二個体で新宿の量販店に来ています。
体組成計を買うため――ではなく、寿命を効率よく消費するために。
この本は、そんなヒトのオス個体に宿る◯◯目線の、おそらく誰も読んだことのない文字列の集積です。

※Audible 生殖記 あらすじより引用

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配信日:2025年11月21日
ナレーター:福圓 美里
再生時間:8時間52分
評価:☆4.4 195件の評価
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物語展開・構成の評価

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
物語の入り口は主人公・尚成の“何も起きていない日常”。
けれど、淡々とした描写の奥に少しずつ「ズレ」や「違和感」が積み重なり、読者をじわじわと物語の核心に引き込んでいく構成が見事です。
特に、ヒトのオス個体に宿る◯◯目線から世界を俯瞰するように語るパートと、個人の小さな心の揺れが並列して描かれる部分は、人間を外側から観察する感覚がしっかり伝わります。

テーマとして描かれている「生き方の選択」について、後半に向かって何かが変わっていく気配が濃くなっていく展開は、構成として非常に完成度の高く、さすが朝井リョウさんだなと感じました。

感情の揺さぶりと読後の印象

⭐️⭐️⭐️⭐️☆
まず、「これはまさか、◯◯目線による語り?!」と気付いたときにはかなり衝撃を受けました。
本当にこんな作品が?と思わずにはいられませんでした🤭

大きな事件が起こるわけではありませんが、尚成がふと漏らす一言や、人との会話のすれ違い、そういった日常の小さな場面も、不思議と刺さってきました。
何気ない瞬間に世界全体を俯瞰するような◯◯視点に切り替わる描写には、「分かるような、分からないような」独特の読後感がありました。

登場人物の魅力

⭐️⭐️⭐️☆☆
尚成という人物は、共感しやすい主人公ではありません。
社会に適応しているようでいて、どこか不思議な距離感を持っていて、その温度差が読者の理解を試してくるタイプです。

職場の同僚や上司など周囲の人々も必要以上に深掘りされず、あくまで観察対象のように描かれており、物語の構成にマッチしていました。

感情移入というより、「この人はどういう生き方を望んでいるんだろう?」と考えながら付き合っていくキャラクターたちでした。

ナレーターの演技・声の印象

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
ナレーター・福圓美里さんの語りが本作と相性抜群でした。
機械的ではないのに中立的で絶妙な声質が、物語の外側から世界を見つめる◯◯視点にピッタリとハマっています。
◯◯に愛着が湧いてくること間違いなしです👌

尚成の心情の語りが長く続く場面や、〇〇視点へ切り替わる瞬間のトーンコントロールは見事で物語に惹き込まれました。
Audible版の強さを改めて実感しました。

こんな方にオススメします

  • 朝井リョウの“社会テーマ×心理描写”が好きな人
  • 読んだあとに「価値観が少し揺れる」小説を求める人
  • 様々な人の生き方の価値観の考え方に触れたい人

『生殖記』は、派手な事件が起きるわけではありませんが、
特徴ある〇〇目線の語り」で「生き方の価値観が多様化する現代」を、静かで濃密なタッチで描いた作品です。
「結婚する/しない」「子どもを持つ/持たない」といった生き方の選択をめぐる価値観のズレを丁寧に描いており、“ジェンダー観や多様な家族の形”を連想させる部分があります。
「性のあり方」を通して「生き方・価値観」に焦点を当てた作品だと感じました。

朝井リョウさんならではの社会問題と心理描写を、ぜひAudibleの福圓美里さんのナレーションを通して楽しむことをオススメします!

本レビューが少しでも皆さんの参考になって、「聴いてみようかな」と思っていただけたら嬉しいです。
もし聴かれた方がいたら、感想もぜひ教えてくださいね!

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