木爾チレン『神に愛されていた』Audibleレビューと感想【小説を書くことに翻弄される二人の女】

Audibleレビュー

※当記事にはアフィリエイト広告が含まれています。
 実際にAudibleを利用した体験をもとに、正直な感想をまとめています。

木爾チレンさんの『神に愛されていた』は、才能と嫉妬、愛と絶望が交錯するヒューマンミステリーです。
若くして人気作家となった「東山冴理(さり)」 は、絶頂期に突然ペンを置き、30年ものあいだ表舞台から姿を消していました。
そんな冴理のもとにある日、女性編集者が執筆依頼を持って訪れます。
それをきっかけに、冴理は自身が経験した過去、そして「白川天音(あまね)」との関係を語りはじめます。
やがて明らかになるのは、希望と絶望、羨望と嫉妬が渦巻く二人の女性作家の運命でした。

Audible版では、ナレーターの「白妙あゆみさん」が登場人物の感情の動きを見事に演じています。
時に激しく、時に嫉妬を含む胸を締めつける心の動きが、声を通してじんわりと伝わってくるのが印象的でした。

今回は、切なくて愛のたくさん詰まっている本作について、レビューを通じて紹介します。

※本レビューでは、ネタバレは無いよう配慮していますが、話の中身に触れる点はありますのでご了承ください。

発売情報・受賞歴

著者:木爾 チレン(1987年6月3日生まれ)
発売日:2020年4月21日
出版社:実業之日本社
受賞歴:ー

あらすじ

若くして小説家デビューを果たし、その美貌と才能で一躍人気作家となった東山冴理。
しかし冴理は人気絶頂のさなか、突然、筆を断った――。
やがて三十年の時が経ち、冴理のもとに、ひとりの女性編集者が執筆依頼に訪れる。
「私には書く権利がないの」そう断る冴理に、
「それは三十年前——白川天音先生が亡くなったことに関係があるのでしょうか」編集者は問う。
「あなたは、誰かを殺したいと思うほどの絶望を味わったことってあるかしら」
――そして、この時を待っていたというように、冴理は語り始める。
高校文芸部の後輩、白川天音が「天才小説家」として目の前に現れてから、
全ての運命の歯車が狂ってしまった過去と、その真実を……。
希望と絶望、 羨望と嫉妬……

これは、ふたりの女性作家が、才能を強く信じて生きた物語。

※Audible 神に愛されていた あらすじより引用

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配信日:2024年8月2日
ナレーター:白妙あゆみ
再生時間:7時間12分
評価:☆4.7 451件の評価
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物語展開・構成の評価

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
絶頂期に筆を置いた人気作家・東山冴理(さり)がひっそりと暮らす部屋に、若い編集者が取材に訪れるところから物語は始まります。
そこから冴理自身が過去を語っていく形で物語が進むのですが、現在と過去の行き来が自然で、聴いていて引っかかりがありませんでした。

冴理と、高校時代の後輩・白川天音(あまね)の関係が少しずつ明らかになっていく流れも丁寧で、「なるほど、そうつながるのか」と思わせる場面が多かったです。
小説家が主役の話はたくさんありますが、この作品の内容は初めて聴く(読む)展開で終始惹き込まれていました。

感情の揺さぶりと読後の印象

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
冒頭こそ「何か凄惨な事件か?」と構えてしまうような導入ですが、冴理の語りが進むにつれ、嫉妬や欲望、挫折といった人間の弱さが響いてきます。
とくに、冴理が天音の尋常でない才能と注目を前にして抱いた感情が、後半にかけて広がっていくあたりでは、自分でも同じ立場ならそうなってくるのかなと感じ、共感しました。

いわゆる“衝撃的展開”を期待すると少し違うかもしれませんし、先の展開は人によっては推測できてしまうかもしれません。
それでも、小説家が主役の話の中でも、こんな展開は触れたことがなかったので、終始惹き込まれました。
重さはあるけれど、心にずっしり残る読後感がこの作品の特徴だと思います。

登場人物の魅力

⭐️⭐️⭐️⭐️☆
この作品は、登場人物どうしの感情の絡み方がとにかく印象に残りました。
単純に「才能ある人」「憧れる人」「憎む人」という括りでは収まらない描かれ方が、読んでいてとてもリアルでした。

外見も小説も才能があふれる天音に嫉妬のような感情を抱いてしまう冴理の、憧れと不安が混ざったその気持ちが、言葉や態度の端々ににじんでいて、すごく人間らしいと感じました。

ナレーターの演技・声の印象

⭐️⭐️⭐️⭐️☆
ナレーター・白妙あゆみさんの声が物語のトーンと良く合っていました。
冴理の陰キャな学生時代や小説家としての心の揺れはもちろん、天真爛漫なキャラの天音も、違和感なく演じられています。

個人的に印象に残ったのは、天音視点で語られる章の“間(ま)”でした。
声が重すぎず軽すぎず、作品の静かな緊張感を保ってくれていると感じました。

こんな方にオススメします

  • 才能や評価をめぐる、人間関係のギクシャクした感じが好きな方
  • 小説家主役の新しい構成の物語に触れたい方
  • 人の才能を見て、素直に喜べない自分にちょっと心当たりがある

こんな方は合わないかも?

  • スカッとする展開や、気持ちのいい結末を求めている方
  • 重たい感情や、嫉妬・劣等感の描写がしんどい方

『神に愛されていた』は、才能に恵まれた人と、そうでないと感じてしまった人の間に生まれる言葉にしづらい感情を、かなり正直に描いた作品でした。

冴理が天音に向ける気持ちは、きれいごとじゃなくて、正直で、ちょっと痛いところもあります。
でも、その感情を「わかってしまう」瞬間があるのが、この作品の怖さでもあり、良さでもあると感じました。

軽く楽しむ作品ではないですが、重たい話を読んで見たい方は、ぜひ一度手に取ってほしい作品です。

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