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実際にAudibleを利用した体験をもとに、正直な感想をまとめています。
佐藤正午の『熟柿(じゅくし)』は、取り返しのつかない過ちを抱えて生きる一人の女性の人生を、静かに、しかし深い迫力で描いた物語です。
激しい雨の夜、眠る夫を助手席に乗せた車を運転していたかおりは、老婆を撥ねてしまい、そのまま逃げてしまったことで轢き逃げの罪に問われます。
刑務所の中で息子・拓を出産するものの、出所後は息子会うことができない中で、西へ西へと各地を転々としてくかおりの前には、やがて彼女の過去と重なり合うある秘密が姿を現します。
その重厚な物語を、Audible版では「中嶋 美風雪さん」の朗読により、かおりの心情がより際立てられており、どんどん惹き込まれていきました。
この記事では、秀逸な文体と重層的な心理描写によって、かおりが歩む旅路の「時間の流れ」を体感できる『熟柿』について、レビューを通じて紹介します。
(ネタバレは無いよう配慮していますが、話の中身に触れる点はありますのでご了承ください。)
佐藤 正午『熟柿』 作品概要
発売情報・受賞歴
著者:佐藤 正午(1955年8月25日)
発売日:2025年3月27日
出版社:KADOKAWA
受賞歴:2026年本屋大賞ノミネート
あらすじ
本の雑誌が選ぶ2025年度上半期 ベスト10 1位
激しい雨の降る夜、眠る夫を乗せた車で老婆を撥ねたかおりは轢き逃げの罪に問われ、服役中に息子・拓を出産する。
出所後息子に会いたいがあまり園児連れ去り事件を起こした彼女は、息子との接見を禁じられ、追われるように西へ西へと各地を流れてゆく。
自らの罪を隠して生きる彼女にやがて、過去にまつわるある秘密が明かされる。
『鳩の撃退法』(山田風太郎賞受賞)『月の満ち欠け』(直木賞受賞)著者による最新長編小説。
※Audible 熟柿 あらすじより引用

Audible版『熟柿』の概要
配信日:2026年2月13日
ナレーター:中嶋 美風雪
再生時間:13時間1分
評価:☆4.6 38件の評価
▶ Audible公式ページで作品詳細を確認
『熟柿』個人レビュー(星評価付き)

物語展開・構成の評価
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
物語は、かおりが轢き逃げ事件を起こしたその瞬間から静かに始まり、聴き進めるほどに彼女の過去と罪に苛まれた心情が積み重なっていきます。
出来事を単に並べるのではなく、「あのときかおりは何を考えていたのか」という内面の層を一枚ずつ剥がすように描いていく構成が見事でした。
時間が直線ではなく、記憶と現在が交錯する形です。
かおりの人生に救いはあるのか、物語の結末はどうなるんだろうと先を想像しながら聴き進めることができる一冊でした。
感情の揺さぶりと読後の印象
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
『熟柿』は前半・中盤・後半で感じ方が変わってくる物語だと感じました。
前半はかおりや周りの登場人物にイライラしながら、中盤はかおりの状況に同情しながら、そして後半は・・・
読後は、これからのかおりがどうなっていくのか想像を巡らせたくなりました。
罪を背負いながら、それでも何かを切望しながら、懸命に生きていく人生は重いため、今現在、しんどい状況にいる方には想像以上に響きすぎるかもしれません。
登場人物の魅力
⭐️⭐️⭐️⭐️☆
かおりは、決して共感しやすい人物ではありません。
轢き逃げという罪を犯し、さらにその後もいくつか過ちを重ねるなど、擁護できる行動ではないはずなのに、彼女の「息子に会いたい」という一点の感情は、あまりにも切実です。
強い人ではなく、むしろ衝動的で未熟な部分もあります。
それでも、自分の罪から目を逸らさずに生きていこうとする姿には、妙なリアリティがあります。
かおりの人生には、自分勝手な人・力になってくれる人、さまざまな人物が登場します。
それらはいずれもリアリティがあり、かおりの人生を引き立てています。
(一点、春子おばさんについてはもう少し深掘りしてほしいなと感じましたが💦)
息子・拓についてはここでは触れるのを割愛しておきます。
ぜひ自身で物語を通して確かめてみてください。
ナレーターの演技・声の印象
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
Audible版は、「中嶋 美風雪さん」の朗読が非常にマッチしていました。
かおりの十数年に及ぶ人生をそのときの年齢や心情に応じたトーンで語られており、リアリティがとてもありました。
その他の登場人物のトーンも同様で、多数の人物の継時変化を見事に演じられています。

総評
こんな方にオススメします
- 罪と向き合う人間の心理をじっくり描いた物語が好きな方
- 親子関係をテーマにした重みのある作品を読みたい方
- 「償い」とは何かを考えさせられる物語を探している方
こんな方は合わないかも?
- テンポの速いサスペンスやミステリー展開を期待している方方
- 今現在、しんどい心境の中にいる方
『熟柿』は、取り返しのつかない過ちを抱えながら、それでも歩き続ける一人の女性の物語です。
かおりの旅は決して前向きな希望に満ちたものではありませんが、それでも、過去から目を背けずに生きようとする姿には、不思議な強さがありました。
Audible版では、中嶋 美風雪さんの朗読により、かおりの心情をリアルに感じながら楽しむことができました。
「熟柿(じゅくし)」の意味とは?そして、かおりの人生に救いはあるのか?
それらを考えながら物語に触れてほしい、そう思わされる一冊でした。
本レビューが少しでも皆さんの参考になって、「聴いてみようかな」と思っていただけたら嬉しいです。
もし聴かれた方がいたら、感想もぜひ教えてください!

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