川村 元気さんの『8番出口』は、世界的に話題になった“異変探し”ゲームを原案に書き下ろした新たなホラー・サスペンス小説です。
地下通路をひたすらさまよい、“出口”を探し続ける。
そのルールだけを手がかりに、“異変を見逃さないこと”“異変を見つけたらすぐ引き返すこと”“異変がなければ進み続けること”“8番出口から脱出すること”という不条理で過酷なゲームに巻き込まれれます。
Audible版では、人気声優梶裕貴さんがナレーションを担当されています。
梶さんの声だからこそ際立つ閉塞感、地下空間の冷たさ、不安と緊張の増幅を体験できる作品となっています。
今回は、逃げ場のない空間でのサバイバルを体験できる本作をAudibleのナレーションの魅力も含めてレビューします。
(ネタバレは無いよう配慮していますが、話の中身に触れる点はありますのでご了承ください。)
川村 元気『8番出口』作品概要
発売情報・受賞歴
著者:川村 元気(1979年3月12日生まれ)
発売日:2023年11月29日
出版社:水鈴社
受賞歴:ー
あらすじ
小説『8番出口』【ご案内 Information】
異変を見逃さないこと
Do not overlook any anomalies.映画を先に楽しみたければ、すぐに引き返すこと
If you would like to experience the film first, turn back immediately.小説を先に楽しみたければ、引き返さないこと
If you would like to experience the novel first, do not turn back.小説で明かされる秘密を、決して他人には言わないこと
Do not reveal the secret unveiled in the novel.8番出口から外に出ること
※Audible 8番出口 あらすじより引用

Audible版『8番出口』の概要
配信日:2025年8月22日
ナレーター:梶 裕貴
再生時間:3時間10分
評価:☆3.9 879件の評価
▶ Audible公式ページで作品詳細を確認
『8番出口』個人レビュー(星評価付き)

物語展開・構成の評価
⭐️⭐️⭐️⭐️☆
原作ゲームの「異変を見つけたら引き返す」というシンプルな縛りを物語構造に落とし込み、読者が“体験者”になれるように設計された構成が見事です。
主人公が地下通路を進むたび、異変が積み重なり、大小さまざまな恐怖に苦しめられる流れがよくできています。
ストーリー自体は極めてミニマルですが、場面の連続だけで緊張感を生む“体験型ホラー”としての完成度は高めでした。
ただし、ホラー要素よりもヒューマンドラマの要素が強いと感じる内容でしたので、ホラー感を期待して聴く(読む)とちょっと拍子抜けするかもしれません。
その点はレビューでも意見が別れているところのようですね。
感情の揺さぶりと読後の印象
⭐️⭐️⭐️☆☆
恐怖や不安の高まりはよくできていますが、読後に強烈な感情の余韻が残るタイプではありませんでした。
どちらかというと主人公や登場人物の苦悩に体感した、という読後感が強い作品でした。
登場人物の魅力
⭐️⭐️⭐️☆☆
物語が“異変を探す体験そのもの”に重心を置いているため、登場人物の掘り下げは必要最低限になっていました。
主人公についても、過去や背景よりも “出口を探す意志の強さ” の描写が印象的でした。全体的には、個々の登場人物の魅力というより、普通の人間が異様な空間に放り込まれたときのリアルさが見どころと感じました。
これらより、多くの登場人物とのドラマを楽しみたい人は向いていない可能性がありますので、ご注意ください。
ナレーターの演技・声の印象
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
梶裕貴さんのナレーションは 圧倒的に作品の完成度を引き上げています。
・異変に気づいた瞬間の“声の温度の変化”
・遠くの物音、足音、アナウンスの気味の悪さ
・振り出しに戻った時の絶望感の表現
これらのクオリティが非常に高いです。
特に、3つめの絶望感を演じるときは本当に惹き込まれました。
進撃の巨人のエレンを連想するような、絶望に打ちひしがれている表現が上手すぎでした。
Audible版を聴くことで、紙の本では得られない 「耳で感じる異変」 を体験できます。

総評 ▷ Audibleの聴き読書をオススメします!
こんな方にオススメします
- サクッと読める短編小説を探している人
- ゲーム版『8番出口』が好きだった人
- 不条理・ループ系の世界観が好きな人
- ナレーション重視で作品を選ぶ人
『8番出口』は、派手な恐怖や大規模な謎解きを楽しむ作品ではなく、“違和感の積み重ね”だけで読者の心をじわじわ追い詰めていく一冊です。
3時間10分と短い作品ながら、地下通路の閉塞感や“見えない恐怖”が丁寧に描かれています。
原作ゲームの「異変を見つけたら引き返す」というシンプルな縛りを、ここまで物語として落とし込んだ著者には拍手を送りたいところです。
さらに、梶さんの魅力的な演出を耳で味わう異常な世界は、テキストでは得られない没入感を与えてくれることをお約束します。
以上、本レビューが少しでも皆さんの参考になって、「聴いてみようかな」と思っていただけたら嬉しいです。
もし聴かれた方がいたら、感想もぜひ教えてくださいね!

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