湊かなえさんの『暁星』は、文部科学大臣であり文壇の重鎮だった男の刺殺事件という2022年のあの事件を連想する衝撃的な事件から始まります。
逮捕された男・永瀬暁が「手記」を通じて語るのは、怨恨ではなく、過去、信仰、そして人間の深い闇です。
著者・湊かなえさんがこの作品について「29作目にして、自分が最も好きだと断言できる作品」だと語っているとおり、宗教二世というデリケートなテーマに“覚悟”をもって取り組んだ一冊になっています。
さらに本作は、彼女自身が選び抜いた名実ともに豪華なナレーション陣による朗読で語られています。
湊さんは「暁闇(男性サイド)」パートには櫻井孝宏さんを、「金星(女性サイド)」パートには早見沙織さんをそれぞれ強く希望したそうで、多くの人に聞いてもらいたいと語っています。
今回は、書籍よりAudibleで先行で配信されるオーディオファースト品となっている本作を、レビューを通じて紹介します。
(ネタバレは無いよう配慮していますが、話の中身に触れる点はありますのでご了承ください。)
湊 かなえ『暁星』 作品概要
発売情報・受賞歴
著者:湊 かなえ(1973年1月生まれ)
発売日:2025年11月27日
出版社:双葉社
受賞歴:ー
あらすじ
現役の文部科学大臣で文壇の大御所作家でもある清水義之が全国高校生総合文化祭の式典の最中、舞台袖から飛び出してきた男に刺されて死亡する事件がおきた。
逮捕された男の名前は永瀬暁、37歳。
永瀬は逮捕されたのち、週刊誌に手記を発表しはじめる。
そこには、清水が深く関わっているとされる新興宗教「世界博愛和光連合(通称:愛光教会)」に対する恨みが綴られていた。
暗闇の奥に隠された永瀬の目的とはーー。
※Audible 暁星 あらすじより引用

Audible版『暁星』の概要
配信日:2025年11月11日 ※オーディオファースト品です
ナレーター:櫻井 孝宏, 早見 沙織
再生時間:11時間38分
評価:☆4.7 678件の評価
▶ Audible公式ページで作品詳細を確認
『暁星』個人レビュー(星評価付き)

物語展開・構成の評価
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
『暁星』は、湊かなえ作品の中でも「構成の巧みさ」が際立っている作品だと感じました。
永瀬暁が逮捕後に残した“手記”という形で語られるため、読者は最初から彼の言葉に寄り添うようにして物語へ引き込まれます。
そして、宗教二世として苦しんだ永瀬暁の人生が描かれた前半の「暁闇(ぎょうあん)」に続き、後半の「金星」では別の視点で物語が語られます。
後半につれ点と点が線になり、「え?この話、そこに繋がっていくの?」と息をのむ展開になっていました。
暁の起こした事件に触れて、多くの人が日本中を震撼させたあの事件を連想、それは、センセーショナルに扱いたかったからではなく、誰もが知っている事件を入り口に物語に踏み込むことで、他人事として遠ざけることのできない読み心地にしたかったからなんです。
このように著者が語っている通り、読後は読む前とは違った考え方が自分の中に生まれたのを感じました。
感情の揺さぶりと読後の印象
⭐️⭐️⭐️⭐️☆
涙が止まらないというような感情の揺さぶられ方ではありませんでしたが、暗闇の中で寄り添うように生きている2人の関係性にはグッと来るものがありました。
レビューコメントなどでもいくつか見られますが、「白夜行」のような感じが好きな方は刺さりやすいと思います。
イヤミスの女王とも称される湊かなえさんの作品の中では少し控え目のように思いますが、それでは幸せな境遇・展開を期待して読むものではないと思いますので、好みではない方は要注意です😥
登場人物の魅力
⭐️⭐️⭐️⭐️☆
暁闇の永瀬暁と金星の女性、ともに物語の中心として欠かせない存在です。
また、ふたりの周囲で関わる家族・宗教団体など、どの人物も活きており、本作を描く上で欠かせない存在になっています。
湊かなえさんの作品らしく、いわゆる毒親が出てきます。
私はこの展開は少し苦手で胸が苦しくなるので、同じく苦手な方はご注意ください。
(とは言っても結局聴い(読んで)しまうのですが汗)
ナレーターの演技・声の印象
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
Audible版『暁星』の魅力の半分は、
櫻井孝宏さん(暁パート)×早見沙織さん(女性パート)
この圧倒的なキャスティングにあると言っても過言ではありません。
湊かなえさん自らお二人を指名したとのことで、著者自身が描いている人物像にマッチするナレーションになっていることが約束されている作品です。
オーディオファースト品として描かれた物語ということもあり、紙の本より“音声で聴くほうが強烈に作品が立ち上がる作品だと感じました。

総評 ▷ Audibleの聴き読書をオススメします!
こんな方にオススメします
- 湊かなえ作品の“心理の深掘りタイプ”が好きな方
- 宗教団体をテーマにした物語に興味がある方
- 一人称の語りから“真相がにじみ出る”タイプのミステリを求めている方
- 有名声優によるナレーションを楽しみたい方
『暁星』は、被疑者・永瀬暁の獄中手記を軸に物語が進み、彼の過去や宗教団体との関わり、家族関係が少しずつ明かされていく構成のミステリです。
事件そのものの衝撃性よりも、語り手の告白によって明らかになっていく〈信仰と依存〉、〈個人と共同体の関係〉といったテーマに重心が置かれている作品でした。
湊かなえさん自身も本作に強い思い入れがあり、重めかつデリケートな題材に対して慎重かつ真摯に向き合っていることが対談や公表コメントから伺えます。
ナレーションも上手すぎて引き込まれっぱなしでしたので、著者のコメント同じく、ぜひ多くの人に聴いて欲しい作品でした。
本レビューが少しでも皆さんの参考になって、「聴いてみようかな」と思っていただけたら嬉しいです。
もし聴かれた方がいたら、感想もぜひ教えてくださいね!

おまけ:湊かなえ×櫻井孝宏×早見沙織の対談
オーディオファースト品となる本作は、著者:湊かなえさんが、ナレーターを指名しています。
指名を受けた櫻井孝宏と早見沙織を含めた対談記事が公開されており、こちらでみなさんの想いを感じることができます。
ぜひ一度読んでみてください。

Audible登録リンク・利用案内
※本ブログはアフィリエイトリンクを含んでいます
Amazonのサイトより登録できます。
基本的に無料体験期間があるので、まずはお試しだけでもオススメします。
家事や自動車通勤など、手は空いていないけど耳は空いている時間がある方は、その時間を有効活用できるようになりますよ!


コメント