婚活という現実的なテーマを扱いながら、どこか温かく、そして少し切ない――。
宮島未奈さんの『婚活マエストロ』は、40代を迎えた主人公：猪名川健人たちが、もう一度“自分の人生を動かす”姿を描いた大人の青春ストーリーです。
婚活パーティーの裏側で交錯する出会いと別れ、そして“婚活マエストロ”鏡原奈緒子の不思議な導きが、思いがけないドラマを生み出します。
笑えて、沁みて、前を向きたくなる一冊です。
今回は、『婚活マエストロ』の物語を自然に盛り上げてくれるAudibleのナレーションの魅力も含めてレビューします。
（ネタバレは無いよう配慮していますが、話の中身に触れる点はありますのでご了承ください。）
宮島 未奈『婚活マエストロ』 作品概要
発売情報・受賞歴
著者：宮島 未奈（1983年10月16日生まれ）
発売日：2024年10月25日
出版社：文藝春秋
受賞歴：ー
あらすじ
40歳の三文ライター・猪名川健人は、婚活事業を営む「ドリーム・ハピネス・プランニング」の紹介記事を書く仕事を引き受ける。
安っぽいホームページ、雑居ビルの中の小さな事務所……どう考えても怪しい。
手作り感あふれる地味なパーティーに現れたのは、やけに姿勢のいいスーツ姿の女性・鏡原奈緒子。
場違いなほどの美女だが、彼女は「私は本気で結婚を考えている人以外は来てほしくありません」と宣言する。
そして生真面目にマイクを握った――そう、彼女は婚活業界では名を知らぬ者はいない〈婚活マエストロ〉だった。
その見事な進行で、参加者は完全にマエストロ・鏡原の掌の上。
彼女は何者なのか、なぜこんな会社で働いているのか、〈マエストロ〉ってなに……謎は深まるばかりだが、猪名川は同社のイベントを手伝うことに。
65歳以上のシニア向け婚活パーティーから、琵琶湖に向かう婚活バスツアー（クルーズ船「ミシガン」に乗車）まで。
これまで結婚に興味のなかった猪名川も、次第に「真面目に婚活するのも悪くないかもしれない」と思い始める。
ものは試しと他社が運営する婚活パーティーを訪れてみると、そこには参加者として席に座る鏡原の姿があった――。
※Audible 婚活マエストロ あらすじより引用
Audible版『婚活マエストロ』の概要
配信日：2024年12月23日
ナレーター：吉野 貴大
再生時間：6時間28分
評価：☆4.6 1666件の評価
▶ Audible公式ページで作品詳細を確認
『婚活マエストロ』個人レビュー（星評価付き）
物語展開・構成の評価
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
婚活会社「ドリーム・ハピネス・プランニング」の“取材”という立場で婚活の現場に飛び込む主人公：猪名川健人。
その視点から描かれる物語は、婚活の裏側や参加者のリアルな姿を鮮やかに描き出します。
とくに、イベント司会者であり“婚活マエストロ”の鏡原奈緒子と関わる場面は物語の軸。
取材対象として距離を保ちつつも、同い年である二人が仕事を通じて少しずつ互いを理解していく流れは、派手さはないのに非常に心地よい展開になっています。
1話1話が短編的にまとまりながら、健人の価値観が変化していく構成は胸が温かくなりました。
感情の揺さぶりと読後の印象
⭐️⭐️⭐️⭐️☆
大きな涙や衝撃的な展開があるタイプではありませんが、じわりと胸に来る気づきが散りばめられています。
たとえば、婚活パーティーで毎回うまく話せず落ち込む参加者を、奈緒子が自然な形でフォローするシーンなど。
また、健人がイチ参加者として婚活イベントに参加し、女性との駆け引きなどで試行錯誤しているシーンも非常に感情移入ができました。
読後は胸が温かく、前向きになれるような余韻がありました。
強烈な感情の波というより、静かに前を向けるような“優しい読後感”を残す作品です。
登場人物の魅力
⭐️⭐️⭐️⭐️☆
猪名川健人は、取材で婚活の現場に立つ“外の人間”でありながら、次第にその世界に入り込んでいく様子が魅力的です。
そして何より、鏡原奈緒子は本作の存在感そのもの。
同作者の成瀬シリーズの成瀬あかりとはまた違った魅力に満ち溢れるキャラクターです。
落ち着いた司会ぶりと洞察力の高さ、そして時折見せる影のような表情が、彼女の人生の背景を想像させます。
また、婚活の場に現れる参加者たちも一人ひとり個性が立っており、
「自己PRで緊張のあまり趣味の話がループしてしまう男性」
「シニア参加者の男性＆女性」
など、現代の婚活事情がリアルに浮かび上がってきます。
群像劇のような魅力があり、耳から聴くことでキャラクター像がより鮮明になりました。
ナレーターの演技・声の印象
⭐️⭐️⭐️⭐️☆
吉野 貴大さんによるナレーションは落ち着いたテンポで、健人の視点に寄り添うように淡々と物語を運んでいきます。
婚活の気まずさや、奈緒子の落ち着いたプロフェッショナルな雰囲気が声のニュアンスでしっかり伝わり、聴きやすさは抜群。
とくに、奈緒子が健人に向けて“現場を見る目”について話すシーンでは、声の穏やかな説得力が作品のリアリティを支えていました。
過剰に演じすぎない、作品に寄り添うナレーションで、長時間でも疲れずに楽しめます。
総評 ▷ Audibleの聴き読書をオススメします！
こんな方にオススメします
- 婚活を“重すぎず軽すぎず”の温度感で楽しみたい人
- 群像劇的な人物描写や、婚活の“現場のリアル”に興味がある人
- 40代以降のキャリア・結婚・人生の再スタートを描く物語が好きな人
- Audibleで落ち着いたナレーションの作品を聴きたい人
『婚活マエストロ』は、婚活という題材を通じて、40代の人生・仕事・孤独・再スタートを軽やかに描いた“大人の青春小説”です。
Audible版ではナレーションが物語の空気感に寄り添い、婚活現場の温度や登場人物の心の変化をより鮮やかに感じさせてくれます。
婚活の喜びや痛みだけでなく、人生を歩き直そうとする人々の姿がそっと心に残る、優しい読書（読聴）体験でした。
また、著者：宮島未奈さんの遊び心からか、滋賀県の琵琶湖が舞台となるシーンも出てきます。
成瀬シリーズのキャラクターこそ出てきませんが、クルーズ船「ミシガン」に乗車するシーンは成瀬ファンの自分にとっても嬉しい演出でした☺️
以上、本レビューが少しでも皆さんの参考になって、「聴いてみようかな」と思っていただけたら嬉しいです。
もし聴かれた方がいたら、感想もぜひ教えてくださいね！
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基本的に無料体験期間があるので、まずはお試しだけでもオススメします。
家事や自動車通勤など、手は空いていないけど耳は空いている時間がある方は、その時間を有効活用できるようになりますよ！
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