【笑いと人生の狭間で揺れる芸人小説】又吉直樹『火花』レビュー

小説

2015年に芥川賞を受賞した話題作『火花』。
芸人たちの生き様を真正面からとらえた一作で、当時ものすごく話題になりましたね。
読書習慣があまりなかった当時の私は本作を手に取ることはありませんでしたが、アラフォーにしてようやくAudibleを通して触れることができました。

Audibleにて本作の朗読を務めるのは俳優・堤真一さん。
落ち着いた渋い声に導かれると、まるで舞台袖で息を潜めている芸人の緊張感や、ライブ後の深夜に漂う孤独感まで、鮮やかに伝わってきます。
又吉直樹さんの「火花」の魅力を、堤真一さんがさらに臨場感を加えて届けてくれています。

今回は「火花」について、レビューを通じて紹介します。
(ネタバレは無いよう配慮していますが、話の中身に触れる点はありますのでご了承ください。)

発売情報・受賞歴

著者:又吉 直樹(1980年6月2日生まれ)
発売日:2015年3月11日
出版社:文藝春秋
受賞歴:2015年 芥川龍之介賞 (第153回)

あらすじ

売れない芸人・徳永は、人生の師とも呼ぶべき先輩・神谷と出会う。
二人は「笑い」の本質について熱く語り合いながら、それぞれの道を模索していく。

笑いとは何か、生きるとはどういうことか──。

人間存在の根源に迫る真摯な筆致は、多くの読者の心を揺さぶり、「文學界」を史上初の大増刷を記録した話題作。

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配信日:2017年12月21日
ナレーター:堤 真一
再生時間:4時間25分
評価:☆4.3 1,519件の評価
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物語展開・構成の評価

⭐️⭐️⭐️⭐️☆
売れない芸人・徳永が、花火大会で出会った破天荒な先輩芸人・神谷に弟子入りを志願するところから物語は始まります。
大げさな起伏やドラマチックな奇跡はないものの、「売れる」「売れない」という芸人の現実が痛切に描かれていきます。
小さな仕事やバイトに追われながらも、笑いに人生を懸ける姿がひたすらリアルでそた。
素人なりに想像していた苦しみが描かれているイメージですが、時には聴いてて苦しくなります。
終盤に向けて、二人の歩む道が決定的にずれていく展開は切なくも納得感があり、「笑いとは何か」を問い続ける物語として強い余韻を残します。
最後の章、神谷のとある突拍子もない行動について真面目に議論する展開は、シュール過ぎて笑えました😂

感情の揺さぶりと読後の印象

⭐️⭐️⭐️⭐️☆
涙が止まらない、といったシーンはないのですが、徳永と神谷の対話や日常描写にじわじわと切なくさせてくるシーンがあります。
神谷が「自分は売れなくても、笑いの真理を追求する」と語る場面や、酒場で延々と議論を交わす場面は、笑いながらもどこか寂しさを感じさせます。
静かに心を揺らし、読了後にふと考え込ませる“後から効いてくるタイプ”の感情の動かされ方になっているのかなと思いました。

登場人物の魅力

⭐️⭐️⭐️⭐️☆
神谷はとにかく破天荒ですが、本当にこういう芸人さんいそうだな、と思わせてくれるところがあるキャラクターです。
借金を重ねても自分の芸風を貫き、時には非常識に思える行動もするけれど、その言葉には妙な説得力があります。
一方で、徳永は控えめで小心者だけれども観察眼が鋭い。
そんな二人のコントラストが絶妙で、違った性格の2人がお笑いへの熱い想いで築かれていく関係性が物語の軸になっています。
また、彼らを取り巻く芸人仲間や舞台の空気も生々しく描かれていて、実際にお笑いライブの袖に立っているような臨場感があります。

ナレーターの演技・声の印象

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
堤真一さんの朗読は、この作品を語るうえで外せません。
低く響く声で神谷の大言壮語(※初めてこの熟語を使いました笑)を朗読すると、一見バカげた主張が妙に説得力を持ち、まるで実際に酒場で説教を受けている気分にさせられます。
一方、徳永の心情を語る部分では落ち着いたトーンに変わり、内省的で少し頼りない雰囲気が見事に表現されていました。
ときおり挟まれる皮肉やユーモアも、堤さんの間の取り方でさらに生き生きと伝わってきます。
テキストだけで読むのとはまた違う深みが生まれていて、まさに朗読が作品を二倍楽しませてくれる仕上がりになっていると思います。

お笑いを極める道を進むことがどれほど忍耐を要することなのかを改めて実感しました。
生粋の芸人であろうとする神谷が報われず、そうでない人々が売れていくところは、現実の厳しさをうまく表現されているなと思いました。

芸人の話なのに、読んでいるうちに「これって自分の人生にも当てはまるな」と思えるシーンが多い不思議な作品になっています。
上述の堤真一さんの見事な朗読も相まって、笑いながら考えさせられ、最後は静かに余韻が残りました。
ぜひ、Audibleで聴いてみてください。

菅田将暉さん(徳永)と桐谷健太さん(神谷)の主演、そして板尾創路さんメガホンにて、2017年に映画化されています。
ぼくはまだ観たことがないのですが、一度観てみたいと思っています。
すでにご覧になっている方は、よければ感想など教えてください。

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