ぼくが村山由佳さんの作品に初めて触れたのがこの『PRIZE -プライズ-』です。
直木賞を目指す主人公の話を直木賞作家が描く、という点に非常に興味を持ち、Audibleでの聴き読書で聴き始めました。
本作品は華やかな成功の裏に潜む承認欲求と支配欲のリアルを鋭く描いた社会派小説になっています。
芸能界を舞台に人間の弱さや業が浮き彫りになる様に、話の続きが気になって止まらなくなりました。
そしてなにより、天羽カインというキャラクターが放つ圧倒的な存在感が、作品に忘れがたい余韻を与えています。
今回は、欲望に翻弄される人間模様を描いた本作品の魅力について紹介します!(ネタバレ無しです)
村山 由佳『PRIZE -プライズ-』 作品概要
発売情報・受賞歴
著者:村山 由佳(1964年7月10日生まれ)
発売日:2025年1月8日
出版社:文藝春秋
受賞歴:2025年9月現在は無し
あらすじ
天羽カインは憤怒の炎に燃えていた。
本を出せばベストセラー、映像化作品多数、本屋大賞にも輝いた。それなのに、直木賞が獲れない。文壇から正当に評価されない。
私の、何が駄目なの? ……何としてでも認めさせてやる。
全身全霊を注ぎ込んで、絶対に。
※Audible PRIZE あらすじより引用

Audible版『PRIZE -プライズ-』の概要
配信日:2022年6月27日
ナレーター:佐藤 恵
再生時間:11時間12分
評価:☆4.6 438件の評価
▶ Audible公式ページで作品詳細を確認
『PRIZE -プライズ-』個人レビュー(星評価付き)

物語展開・構成の評価
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
作家・天羽カインの野心や葛藤を主軸にテンポよく物語が進みます。
特に直木賞への挑戦や文壇との確執の描写は緊張感があり、惹きつけられます。
個人的には編集者の苦労がしっかり描かれている点が新鮮味があり良かったです。
一冊の本が世に送り出されるまでには小説家と編集者との間にはこんな濃厚な時間があるのかと惹き込まれながら聴いていました。
「直木賞さえ取れば満たされる」そんな欲求が満たされるのかどうか、先が気になり一気に聴き進めることになりました。
感情の揺さぶりと読後の印象
⭐️⭐️⭐️☆☆
天羽カインの苛立ちや焦燥感、成功と挫折の対比を描くシーンを筆頭に、作中の登場人物の感情は激しく動きます。
本作品はその登場人物の心理描写などを楽しむことができます。
感動して涙が、といったシーンは少ないかもしれません。
登場人物の魅力
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
先述の通り、喉から手が出るほど直木賞が欲しい作家・天羽カインと、天羽カインの一ファンでもありその作品ととある縁がある編集者・緒沢千紘がメインで物語が展開されます。
天羽カインの強烈な個性に圧倒されますが、緒沢千紘との交流で少しづつ変化していく様、そしてラストの展開を終えたあとには、きっとみなさん天羽カインのことが好きになっているのではないでしょうか。
ナレーターの演技・声の印象
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
カインの内面や文壇の空気感を伝える声の演技が非常に自然で、物語世界に入りやすいです。
カインの劇場には聴いているこちらがヒヤッとするほど😂
カイン以外の登場人物(編集者・文壇など)、いずれも演じ分けが丁寧でセリフを聞くと、すぐに誰が喋っているというのがわかるできになっています。
総評 ▷ Audibleでの聴き読書をオススメします!
ナレーションの演じ分けが自然で、作風に非常にマッチしていますので、Audibleでの聴き読書をオススメします!
本を出せばヒットするのに、どうしても賞だけは取れない――そんなジレンマに苦しむ姿はコミカルさも含みつつ、人間味あふれているため、非常に惹き込まれます。
作家という存在のプライドや欲望が赤裸々に描かれ、読み進めるうちに「物を書くことの意味」を改めて考えさせられます。
また、作家と編集者の役割を改めて考えさせられることにもなります。
直木賞や文壇の裏側に興味がある方はもちろん、濃厚な人間ドラマが好きな方にもおすすめできる一冊です。
作者の村山由佳さんもコメントされていますが、「最後には天羽カインがかっこいい」と思うようになりますので、その展開も期待して読んで(聴いて)みてください。

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基本的に無料体験期間があるので、まずはお試しだけでもオススメします。
家事や自動車通勤など、手は空いていないけど耳は空いている時間がある方は、その時間を有効活用できるようになりますよ!


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