【逃亡生活を通して映す社会の影】染井 為人『正体』

小説


ぼくが染井為人さんの作品にはじめて触れたのはこの「正体」でした。
逃亡劇の緊迫感の中に、人間の優しさや苦悩が繊細に織り込まれ、読後には深い余韻を残す、そんなこの作品の魅力にどっぷりハマり、染井さんの作品自体のファンになりました。
小説『正体』は、逃亡者の物語を超えて、心に残るテーマを投げかけてきます。
そんなこの作品の魅力について紹介します!(ネタバレ無しです)

発売情報・受賞歴

著者:染井 為人(1983年7月21日生まれ)
発売日:2020年1月30日
出版社:光文社
受賞歴:特定の文学賞受賞歴は無し。
    ※後に映画された際には「2025年発表の第48回日本アカデミー賞最優秀監督賞」を受賞。

あらすじ

死刑囚の少年が脱獄した――。
警察が血眼で行方を追う一方、彼は東京オリンピック施設の建設現場、雪深い旅館、新興宗教の集会、介護施設など、現代社会の片隅に身を潜めていく。
人々と交わりながら正体を隠して生きる緊迫の日々。
彼が逃げ続ける理由とは? その胸に秘めたものとは?
映像化され、さらに注目を集める、社会派サスペンスの傑作。

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配信日:2022年11月4日
ナレーター:渡辺 紘
再生時間:20時間3分
評価:☆4.8 3,292件の評価
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物語展開・構成の評価

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
緻密な伏線と計算された場面展開で、一度読み始めたら手が止まらない構成です。
東京オリンピック施設やスキー場、グループホームなど、現代社会の多様な舞台を背景に逃亡劇が展開されることで、単なるサスペンスに留まらず、社会の隙間を映し出す重厚な物語になっています。
各章メインのキャラクターの視点より、逃亡者の目的や心理が少しずつ明かされる構造も秀逸で、ラストまで緊張感を持続させています。

感情の揺さぶりと読後の印象

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
潜伏生活での人々との関わりや、逃げ切るための緻密な行動は手に汗握る一方で、彼の孤独や社会との断絶感に胸を締め付けられます。
読者としては道徳的な葛藤も抱えながら読んでいくことになります。
最後のシーンも圧巻で、ぼくはもちろん、がっつり涙を流しながら読みました。

登場人物の魅力

⭐️⭐️⭐️⭐️☆
主人公の逃亡者としての行動や心理描写は圧倒的で、読者を物語に引き込む力があります。
彼を取り巻く人々も、建設現場の作業員や旅館の従業員、グループホームのスタッフなど、それぞれが実際にいてもおかしくないような人間味をもっておりとても共感できます。
これらのキャラのこのあとの展開をもっと描いてくれたらよかったなと個人的には思いました。

ナレーターの演技・声の印象

⭐️⭐️⭐️☆☆
この作品にマッチしていないということはなく、スムーズに聴き進められました。
朗読する際にあまりオーバーに表現をする形ではなく、聴き手の想像を邪魔しないように配慮されているという印象です。
朗読手法については好みが分かれるところですが、個人的には感情を大きく込めて朗読してくれる形が好きなので☆3つとしています。

Skiing in snowstorm in Mayrhofen – Austrian Alps winter ski resort in Tyrol. Austrian Central Alps.

逃亡×心理描写の最強サスペンスです。
そして、サスペンスとしてのスリルだけでなく、人間の本質や社会の光と影を考えさせる点でも秀逸で、読み応えのある一冊になっています。
感動もできること間違いなしですので、ぜひお手にとってみてください!

なお、後に映画化もされましたが、主人公を演じる横浜流星さんがぼくが持っていた主人公イメージにピッタリで驚きました。
みなさんは配役についてどんな感想をお持ちでしたか?
映画も素晴らしい出来ですので、こちらもぜひ。

映画:正体 公式HPはこちら

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